過敏性腸症候群(IBS)

腸と脳には密接な関係があり、脳が不安やストレスを感じると、その信号が腸に伝わって影響を与えてしまうことがあります。

その際おきる代表的な症状が過敏性腸症候群(IBS)です。過敏性腸症候群が起こる仕組み、またその治療についてご紹介します。

過敏性腸症候群はストレスからくる腸の不調

過敏性腸症候群(IBS)は、ストレスが原因となって現れる腸の不調で、痛みや不快感に加え下痢や便秘などが慢性的にくり返されます。

脳が不安やストレスを感じた時、そのストレスは腸にも影響が出るのですが、過敏性腸症候群(IBS)の方の場合、この影響がより伝わりやすい状態になっています。

下痢、便秘が起こるしくみ

通常、胃から腸へ運ばれる消化された食べ物には多くの水分が含まれています。

これが約20時間以上かけ、ゆっくりと腸内を通っていくうちに水分の一部は腸に吸収され、適度な硬さの便となり、排出されます。

しかしここでストレスの影響を受けると、腸の動きに異常が起こってきます。

例えば下痢の場合は、腸が過剰に動き、胃から入ってきた消化された食べ物が通常より速く腸を通過してしまいます。

これにより腸で水分を十分に吸収できなくなるため、便がゆるい泥状や液状になってしまうのです。

また、便秘の場合はこれとは逆で、腸の運動が鈍くなります。すると消化物が腸内に長時間留まってしまいます。

その結果、消化された食べ物に含まれる水分が腸に吸収されすぎてしまい、便が硬くなり便秘になります。

日常生活への影響

普段ならば、時折身体の不調や食生活の変化で現れる腸の異常ですが、過敏性腸症候群(IBS)の場合は以下のようにストレスを感じるたびに腹痛や下痢、便秘が起きます。

  • 通勤・通学中の車や電車で急にお腹が痛くなる
  • 試験や会議などの緊張する場面が近づくとお腹が痛くなる
  • 外出中や旅行中にお腹が痛くなり、トイレを探すことが多い

症状が起きる不安ゆえに外出をすることが怖くなってしまい、実際に日常生活に影響が出ることもあります。

最近では、腸が過剰に反応するしくみにセロトニンという情報伝達を行う物質が係わっていることが分かってきました。

このセロトニンをうまくコントロールすることで、ストレスを感じた場合でも症状を抑えることができるということがわかってきました。

診断と治療について

過敏性腸症候群(IBS)の治療についてご紹介します。

診断の際にはどんな時に症状があるか、また腹痛や不快感がどのくらいの時間どんな様子でおこるのかをお聞きします。また他の病気である可能性が無いかを診断していきます。

基本的には腸を良い調子に保つために、食事のリズムや内容に気を付け、睡眠を十分にとることが大切です。

加えて、朝の排便の時間をとり、ストレスをなるべく上手く解消するというように生活の改善が必須となります。

腸に負担をかけない食事

現在の自分の腸の状態に合わせて、食事を見直してみましょう。

くり返し下痢を起こしている場合、腸への刺激をさけるため、辛い物や冷たい物、また腸に負担のかかる脂ものは避けましょう。

牛乳などの乳製品やお酒も下痢を引き起こす可能性があるので、しばらくは控えたほうがいいでしょう。

便秘の場合も、香辛料等の刺激の多い食品は避けます。

その他に、便が柔らかくなるように水分や食物繊維を積極的に摂取できるような食事を取る様に心がけます。

腸の働きを整える運動療法

運動は腸の働きを正常に整える効果が見込めるほか、過敏性腸症候群(IBS)にとても大切なストレスの解消にもなります。

無理に負荷の大きい運動をする必要はありません。起床時や就寝前のストレッチや散歩など、気持ち良くできる程度の軽い運動を生活に取り入れましょう。

お薬による治療は症状によって処方が変わります

過敏性腸症候群(IBS)は食事療法や運動療法ですぐに症状を改善させるのは難しいのが実際です。

しかし日常生活に影響が出ている方もいらっしゃいますので、薬を使用するのも効果的です。

薬物療法では、症状に合わせて治療薬が処方されます。

最近では新しいタイプの治療薬として、腸のセロトニンに働きかけ、早い段階から確実に症状を改善する薬も用いられています。

過敏性腸症候群(IBS)はきちんとした治療で直る病気ですので、思い当たることがありましたら早めにご相談ください。