パニック障害は、突然何のきっかけもなく心臓がドキドキしたり、息苦しくなったり、めまいなどのパニック発作が起きる精神疾患で、日本では100人に1人くらいの割合で発症しているとされています。
放っておいて自然に良くなることはあまり期待できず多くの方は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性化してしまいますが、早期に治療をすれば完治する病気です。
症状は長くて数十分ほどしか続きませんが、発症時の不安と恐怖は大きく、心臓発作や呼吸困難で死ぬのではと思い救急車で病院へ運ばれることも珍しくありません。
パニック発作がおさまると症状は見られなくなり、検査をしても異常は見つかりません。
しかしパニック障害の症状は繰り返し起きる傾向があるため、「また、 あの発作が襲ってくるかもしれない…」という予期不安が強くなり、一人での外出ができなくなったり、電車・自動車・飛行機などの乗り物に乗れなくなるな ど、日常生活に支障をきたすこともあります。
うつ病・うつ状態を合併することもあり、逆にうつ病がきっかけとなりパニック発作が起きる場合もあります。
パニック障害の症状、起こりやすい場面
パニック障害は強烈な不安や恐怖感を伴います。
具体的には、下記の中から複数の症状が同時に5~20分ほど起こります。
心の症状
- 心臓がドキドキする(動悸・心拍数の増加)
- 急に汗が出てとまらない、脂汗が出る
- 身体の震える
- 呼吸が早くなったり息切れ、息苦しさがある
- 身体の一部がしびれる、うずく
- 悪寒がする、または火照る
- 喉に何か詰まったような窒息感
- 胸の痛み、不快感
- 吐き気、腹部の不快感
- めまい、ふらつき、気が遠くなるような感じがする
身体の症状
- 今起こっていることが現実ではないような感じ(非現実感)
- 自分が自分ではない感じがする(離人感)
- このまま死んでしまうのではないかという恐れがある
- パニック障害が起こりやすい場面
- 電車・バスに乗っている時
- 自分で車を運転中の時
- 緊張がとけた時
- 会議に参加している時
- パニック障害を起こしたことがある場所
パニック障害の原因
パニック障害の原因は、まだ解明されていませんが、ストレスや脳内の伝達物質の動きに関連があるのではないかといわれています。
人間の脳には数多くの神経細胞(ニューロン)や受容体(レセプター)が存在し、その間を情報が伝わることで感情、知覚、運動、自律神経などの働きが起こります。
その働きに誤作動が生じることでパニック発作や予期不安、恐怖が表れるのではないかと言われています。
パニック障害の治療
パニック障害の治療には、お薬による治療が一般的です。
お薬を飲み始めて1ヶ月ほどで効果が出てきますが、この時点でお薬を止めてしまうと、再発してしまう可能性が高まります。
お薬は継続的に飲まれることをお勧めしています。また、できるだけリラックスできる時間を作り軽い運動などを取り入れストレスを溜め込まないようにすることも大切です。
ある程度お薬による治療を続けていくと、今後も継続的に薬を飲み続けていくことへの不安やパニック発作再発への心配などの新たな悩みがでてきます。
この部分を解消するため患者さんが避けている状況に少しずつ慣れていく治療を行います。
治療で心がけること
心と身体のストレスを溜めない
勤務先での人間関係やご家族との問題など、心のストレスだけではなく、過労や睡眠不足などの身体的なストレスもパニック発作を引き起こす要因になります。
心にも身体も過度に負担をかけないように、ゆとりのある生活を心がけます。
治療を焦らない
パニック発作が起きなくなったとしても、お薬による治療は継続して行います。発作が起きなくなったからと言って、治療をやめてしまうと発作が再発してしまうこともあります。
家族や周囲の方のサポートを受ける
パニック障害の治療には、家族や周囲の方の理解とサポートが必要になります。周りの方にパニック障害についての理解してもらうことで、気持ちの面でも楽になります。
規則正しい生活を心がける
1日3食規則正しい食事と十分な睡眠を取る事で、心身のストレス軽減が大切です。風邪など体調が悪い時はパニック発作の症状が出やすいといわれています。
アルコールやタバコ、カフェインは控える
アルコールやニコチン・カフェインはパニック発作を引き起こしやすくするため、治療中はできるだけ控えましょう。